新刊のご紹介
2013年 03月 22日
宮下木花 童話集 銀の鈴社刊
宮下さんは、現在高校三年生の作家さんです。
6才の頃から童話を書き始め四年生(9才)から児童ペンクラブの会員となり、「童話のポケット」に多数の作品を発表、何と小学6年生(11才)で童話集「ひとしずくのなみだ」を出版されています。
続けて中1(12才)で第二童話集「いちばん大切な願い事」を出版、この童話集で第46回群馬県文学賞で、最年少受賞をする、という快挙を成し遂げています。
さらに中3(14才)「おひさまパン」で一般財団法人グリムの里いしばし主催の第10回グリム童話賞優秀賞を受賞!!されているのです。
お父様は詩人の宮下洋二さん。
その素質を受け継いでいらっしゃるのか、木花さんの童話には、詩的でハッとするような言葉がどこかしこに紡がれています。
三冊目の童話集は、そのグリム童話賞受賞作を含む、書き下ろしの2編「海色タクシー」
表題となった「虹の歌」が収められています。
おひさまパンと海色タクシーのファンタジーを読んで、ほっこりとした気持ちで読み進めていくと、
虹の歌は、そのタイトルからは思いもかけない「いじめ」がくりひろげられます。
残酷で陰湿ないじめが、小学校で当たり前のようにくりかえされるのです。
きっかけは、絵の上手な主人公「天歌」に対する嫉妬心から。
しかも、ボスは一番の仲良し、「親友になろうね」と誓い合った友だち「伸子」
伸子によって、クラス中を巻き込んだいじめは、どんどんエスカレートしていきます。
いじめが最高潮に達した時、天歌はとうとう悲しい決意をしてしまいますが、
凄腕の作者は、針の穴ほどのちいさな仕掛けを作って問題を解決させました。
そのしかけによって、お話は読者を安堵の方向へ誘うのです。
それは読んでのお楽しみ、です。
少年少女の一番近くにいる作者だからこその、描き方でしょう。
お見事、というほかありません。
読みながら目頭が熱くなっていたので、結末にほっと、胸をなでおろしました。
生きていてよかった!!
本当に。
こちらから